A 後遺障害とは、治療を受けているにもかかわらず完治せず、その改善効果が見込めない状態で固定した障害をいいます。そして、後遺障害による逸失利益は、その後遺障害が被害者の労働能力にどのように影響し、また、それが将来どの程度持続するかを予測して、これが被害者の将来の収入にどの程度影響をもたらすかということを金銭的に算定するものです。そのため、不確定な要素が多分に含まれるので、裁判などにおいても頻繁に問題となりますが、一般的には、後遺障害による逸失は、次のような算式により算定されます。
=「被害者の基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数あるいはホフマン係数」
なお、ライプニッツ係数あるいはホフマン係数とは、将来の収入を一時金で受け取るために、途中で発生する利息を差し引くための係数のことをいいます。
交通事故Q&A
A 通常、受傷前の収入額と後遺障害残存後の収入額において減収がない場合には逸失利益は認められないとも思われますが、裁判例では、たとえ減収がない場合であっても昇進・昇給等における不利益があったこと、後遺障害により業務に支障が生じていること、将来の退職・転勤の可能性が認められること、さらに業務上の支障をカバーするために努力をしているなど本人の努力により減収を免れていることなどを考慮して、逸失利益を認めているものもあります。
したがって、減収がない場合にも具体的事情によっては逸失利益が認められる場合があります。
A 労働能力の低下の程度については、一般的な基準として労働省労働基準局長通牒別表労働能力喪失率表が利用されます。しかし、後遺障害は多種多様であり、またその影響は被害者の年齢・性別・職業などによって異なります。たとえば、事故により手の指を1本失った場合、ピアニストや大工さんなら大変な労働能力を失いますが、事務系の会社員ならさほど支障が生じない場合もあります。
そこで、労働能力喪失率は、被害者の職業、年齢、性別、後遺障害の部位、程度、事故前後の稼働状況等を総合的に判断して具体的に評価されます。
A 労働能力喪失期間の始期は症状固定日とされ、その終期は原則として67歳までとされます。
この点、裁判例は、後遺障害のうち重篤なものについては、原則として就労可能年数いっぱいまで認める傾向にありますが、たとえば軽度の神経症状のように後遺障害といっても相当期間後には回復することが予想できるものや、軽度の障害で本人の慣れなどにより労働能力ひいては収入に対する影響が軽減していく場合においては、年数を制限する傾向にあります。
したがって、労働能力喪失期間は、被害者の職種、地位、健康状態、能力等を考慮して具体的に判断がされる場合があります。
A.交通事故による怪我の治療のため、仕事ができなくなり、収入が減ってしまった場合、その減額分を相手方に請求することができます(事故については当方に過失がないという前提です。)。このような損害を休業損害といいます。
休業損害は、あなたの事故直前の収入に基づいて計算されます。
例えば会社員の場合は、事故直前3ヶ月間の給与額などに基づいて、休業1日あたりの損害額を計算します。この場合、事故前の給与額は、住宅手当・残業手当等の付加給を含め、所得税等を控除しない金額を使用します。賞与についても、欠勤がなければ勤務先の規定によって本来受けることができた賞与額と、現実に支給された賞与額とに差があれば、その差額を相手方に請求することができます。
そして、休業損害を請求する際には、その計算の根拠となる資料を示す必要があります。勤務先から休業損害証明書や賞与の減額証明書などを発行してもらいましょう。
なお、有給休暇を使用した場合も、有給休暇は労働者の有する権利として財産的な価値を有することから、休業日数に含まれると考えるのが通常です。
A.個人事業主の場合、主に事故前年の確定申告書に基づく収入額によって、休業1日あたりの損害額を計算します。この収入額は、売上額から売上原価や消耗品費・交通費といった事業活動に応じて支出される流動経費を控除し、事業活動に関わらず支出される家賃等の固定経費を控除しない金額を使用するのが通常です。
会社経営者の場合は、事故前の役員報酬額がそのまま休業損害の計算に利用できるとは限りません。役員報酬には、自己の労務の対価たる性質を有する部分と、会社の利益の配当たる性質を有する部分とがあり、休業損害は労務の対価たる性質を有する部分についてのみ認められると考えられているからです。どこまでが労務の対価たる性質を有しているかは、会社の規模や役員の職務内容等を考慮して算定されます。
A.主婦は、家事労働に従事していると考えられますので、事故による怪我で家事ができなくなった場合には、休業損害が認められます。主婦の収入額は、統計による女性労働者の平均賃金等を基準にして計算されます。なお、家事をしているのが男性(主夫)であっても、休業損害は認められます。
学生は、収入を得ているわけではないので、原則として休業損害は認められません。ただし、アルバイトをしていた場合には休業損害が認められることがあります。また、治療のために卒業ができず、就職が遅れたような場合は、就職遅れによる損害が認められることがあります。
失業者も、原則として休業損害は認められません。しかし、労働能力と労働意欲があり、治療期間中に就労したであろう蓋然性が認められる場合(就職が内定していた場合や、近い将来に就労する可能性が高かった場合等)には、休業損害が認められることがあります。
※ このQ&Aは全ての交通事故にそのまま該当するわけではありません。個々の具体的なケースについては弁護士へご相談下さい。



