横浜綜合法律事務所 コラム

長瀬 陽朗「ドローンと威力業務妨害」

先日、首相官邸の屋上からドローン(無線で操縦される無人の小型航空機)が発見されるというニュースが世間を騒がせた。間もなく犯人が自ら警察に出頭したが、ニュースを見て弁護士として気になったのは、これが何の犯罪になるのか?ということだった。

今のところ、ドローンを直接規制するような法律はなく、航空法で規制された高度・空域以外は、誰でも自由にドローンを飛ばすことができる。機械が侵入しただけで、操縦していた人が官邸の敷地に侵入したわけではないから、建造物侵入罪等にはならない。通常は使用されていない無人の屋上に落ちただけでは、公務執行妨害罪にもならない。
もちろん、カメラ付きのドローンで他人のプライバシーを侵害したり、ドローンの衝突で他人の身体や財産を傷つけてしまったら、迷惑防止条例や民事上の損害賠償の問題にはなり得る。しかし、建物の屋上にドローンが着陸したからと言って、ただそれだけでは刑法上の犯罪にも、条例違反にもならず、屋根が傷ついたりしなければ民事上の損害賠償の問題も起こらないだろう。

今回の事件の男は、威力業務妨害罪の疑いで逮捕されることになった。
威力業務妨害とは、「威力」を用いて人の業務を妨害する行為のことだ。この「威力」というのは「人の意思を制圧するような勢力」などと言われているが、これは様々な状況に応じて判断されるので、一概には言えない。単純な暴行や脅迫を用いるものもあれば、職場の机の引き出しに猫の死体を入れた行為が「威力」とされた判例もある。
今回のドローンの飛行と着陸(墜落?)が「威力」にあたると警察は判断したようだが、裁判所はどう考えるだろうか。
ドローンの飛行についての先例はおそらくないが、一般的に、他人の土地の上空を許可なく飛行する行為が全て「威力」にあたるとは言いがたい。テロなどを厳重に警戒している官邸であればこそ、ドローンを侵入させることが「威力」にあたり得るのではないだろうか。

2015年6月26日

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