横浜綜合法律事務所 コラム

楠瀬 健太「ペットの治療費」

昨年末のこと、家で飼っている犬(ウェルシュ・コーギー/13歳♂)が体調を崩してしまいました。
いつもは散歩に行く素振りを見せれば家を走り回るのですが、一向に寝床から起き上がらず、餌も全く口にしなくなってしまいました。
家族だけでは騒ぐばかりで何も解決できず、近所の動物病院に連れて行くことになり、一日がかりで栄養補給のための点滴を打ってもらい安静にさせるという毎日を送りました。
結局、数週間経つとケロッと餌を食べ始め、いつものように走り回るようになったのですが、両親から治療にかかった金額を聞き驚愕しました。なんと数十万円です。
かけがえのない我が家の一員、お金の話をするのはどうかと思いますが、彼の購入価格の約5倍の金額でした。
前置きが長くなってしまいましたが、そんなこともあり、今回のコラムは、「ペットの治療費」が法律上どのように扱われているのかというテーマで書きたいと思います。
たとえば、ペットが自動車に轢かれてしまい、治療費がかかったと場合、その際に飼い主は、車の運転手に対して、治療費全額を請求できるのでしょうか。
まず、前提として、日本の法律上、動物は「物」として扱われます。
そして、物の損害賠償においては、その物の時価を超えて損害賠償をする必要はないというのが日本における原則です。
したがって、うちの犬のように治療費に数十万かかった場合、日本においてはよほど高価な犬でないかぎり、治療費全額の請求をすることはできないということになってしまうのです。
ペットを家族同然に感じている人からすれば、全く納得のいく結論ではないですが残念ながら日本の法律ではこのような結論になってしまいます。
では、ペットの先進国であるヨーロッパではどのような扱いがなされているのでしょうか。
動物福祉の先進国と言われているドイツでは、そもそも動物は「物ではない」と法律に明記されています。
また、動物の治療費についても特別な規定があり、動物の時価を超えて治療費が発生したとしても、高額であるため不必要ということにはならないとされているのです。
したがって、ドイツでペットが交通事故に遭った場合には、時価を超える治療費全額を請求できる可能性があることになります。
近年は、民間ではペット保険などペットを特別なものとする扱いが広がってはいるものの、上の例にも表れるようにペット先進国との間では未だ法律や考え方に差があるといわざるを得ない状況です。
ペットを愛する者として、日本でもペットに関する制度や法律が整備されることを願うばかりです。

2018年3月29日

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