横浜綜合法律事務所 コラム

榎本 ゆき乃「預金等の相続について」

被相続人が財産を残して亡くなった場合、相続人間で遺産をどのように分けるか、遺産分割協議をする必要があります。そして、協議が調わなければ家庭裁判所で調停をし、それでもだめなら審判がなされて、遺産の帰属が決まることになります。
ところで、被相続人が残した財産の中には銀行預金等の預金があることがほとんどです。この預金については、法律上、遺産分割の対象にならない、というのは御存知でしょうか? 銀行預金は銀行に対する預金債権ですが、このような可分な債権は、相続によって相続人に当然に分割され(法定相続分で)、遺産分割の対象にならないというのが最高裁の判断なのです。但し、相続人の全員が遺産分割の対象とする合意をすれば別で、たとえば、不動産と預金があり、一人の相続人が不動産を相続し、もう一人の相続人が預金の全額を相続するということもできることになるわけです。言い換えれば、このような合意がなければ、遺産分割の対象にならないのです。
また、預金の場合は上記のとおりですが、では、投資信託の場合はどうか、国債の場合はどうかなど、その種類によって、それが法律上遺産分割の対象になるのかならないのかについて裁判で争われており、近時それぞれ最高裁の判断が出ました。ここでは詳細は割愛しますが、その債権の性質によって判断がなされています。
ただ、現在、相続法の全体について改正が検討されており、上記のような可分債権の当然分割についての見直しも検討事項の一つとなっています。預金は、不動産などとは異なり、遺産を分割する場合の調整として有用であるため、上記のように、合意がない限り当然分割として遺産分割の対象とならないというのは不合理だという考え方もあり、今後の法改正で、預金等の可分債権も、合意なくして遺産分割対象財産となることになるかもしれません。
相続法制改正の動向に注目しています。

10月 14, 2016

渡部 英明「刑事司法改革関連法について」

平成28年5月24日、衆議院本会議で「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」(いわゆる刑事司法改革関連法)が可決、成立した。刑事司法改革関連法では、これまで密室で行われていた警察・検察の取調べのうち、裁判員裁判対象事件や検察の独自捜査事件で逮捕・勾留中の被疑者に限り、被疑者の同意があった場合には録音・録画(可視化)することが可能になった。今回の法改正は取調べの可視化の一部に限られたが、取調べが任意に行われたのか否かを検証するために、取調べ状況を録音・録画することになり、これにより冤罪の防止につながると期待されている。
ただ、暴力団等の組織犯罪について、取調べを録音・録画されるのであれば、一切しゃべらないという被疑者も現れることが予想され、事案の真相解明という刑事訴訟法の目的からすると、犯罪の特殊性を考慮せずに一律に取調べを可視化するという手法が合理的なのか否かは今後の課題といえる。
また、通信傍受の対象犯罪が薬物や銃器犯罪等に限られていたものを複数犯による殺人、傷害、逮捕・監禁、窃盗・強盗、詐欺・恐喝、児童ポルノ等にまで拡大して、組織犯罪の解明ができるようにした。
さらに、司法取引も導入された。この手法について、実務において、今後、どのような影響を与えるのかは未知数であるが、他人の犯罪事実を明らかにするための供述をすることで不起訴や特定の求刑をすることの取引をすることによって冤罪事件が起きる可能性があると指摘する意見もあり刑事弁護において、新たな事案が増えてくるのではないかと危惧している。
今回の改正は、組織犯罪の解明に際し、通信傍受や司法取引等捜査機関にその手段を与える一方、被疑者の権利擁護のため取調べの可視化も一部認めることにより、バランスを図った法案のようである。
この刑事司法関連法案は様々な論点で様々な所で賛成・反対の意見表明が出されて成立したものなので、成立後もその運用に際し、弊害がないかチェックしていくことが肝要である。

9月 12, 2016

湯沢 誠「何故弁護士は凶悪犯人を弁護するのか」

残念ながら凶悪犯罪に関するニュースが絶えることはない。また死刑を宣告された死刑囚の死刑執行のニュースも時折報道される。そのような機会に犯罪者の弁護人である弁護士がマスコミに登場し、そのコメントが報道されることも多い。
「何で弁護士はあのような凶悪犯人を弁護するんですか。お金のためですか。」私もこのような質問を少なからず受けたことがある。凶悪犯人が自己弁護をするなどもってのほかであり、それを助ける弁護士は必要悪だと考えるのも無理からぬことと思われる。
しかし、一方で死刑の判決を受けた「犯罪者」が再審請求を行い、無罪となったとの報道も極たまにではあるが、見聞きするところである。
刑事訴訟法289条1項は「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁固にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない」と定めており、被告人が起訴された後に私選弁護人を選任しない場合は、裁判所が国選弁護人を付することになっている。
平成16年には国選弁護人制度が拡充され、上記と同じ重大事件については、被疑者段階にも国の費用により弁護人が付されることになった。
選任された弁護人には、日弁連の定める弁護士職務基本規定46条の「弁護士は、被疑者及び被告人の防御権が保障されていることにかんがみ、その権利及び利益を擁護するため、最善の弁護活動に努める」との規定が適用されるため、被疑者・被告人の利益に反する行動や発言をすることは禁じられている。このため、たとえば、被疑者・被告人が捜査機関に対しては否認しているにもかかわらず、弁護人に犯罪を行ったことを認めた発言をした場合に、それを捜査機関やマスコミにリークした場合は日弁連より懲戒処分を受けることになるのである。
かくして、弁護士は裁判所より凶悪犯人の弁護人に選任された場合は凶悪犯人のために「誠実に」職務を遂行せねばならないのである。ストーカー殺人など極めて一方的で、被告人に酌むべき情状が全くないと思われるような事件の弁護を担当することとなった弁護人は極めて辛い立場に置かれることになるのである。弁護士のこの辺の事情をご理解いただきたいと考えて本稿をしたためた次第である。

7月 22, 2016

佐伯 昭彦「事務所移転」

5月9日より、長年慣れ親しんだスカーフ会館から横浜情報文化センターに事務所を移転しました。ゴールデンウィーク前後は、移転作業等もあり、バタバタしており、依頼者の皆様にもご迷惑をおかけしたかと思いますが、お陰様で作業自体は順調に進み、無事完了することができました。
新事務所は、日本大通りを挟んで裁判所の目の前にあり、みなとみらい線日本大通り駅の3番出口(情文センター口)から直結という抜群のロケーションにあります。
一部の方からは、スカーフ会館時代はJR・横浜市営地下鉄関内駅から約5分だったのに、情報文化センターになって約10分になってしまったと不満の声もないわけではありませんが、総じて良い感想を頂いております。
少し横浜情報文化センターのことを紹介させて頂くと、建物は、旧横浜商工奨励館を再利用した4階建ての旧館部分と新たに造られた12階建ての新館部分から構成されており、旧館部分は平成11年2月に横浜市認定歴史的建造物に認定されております。
ビルはオフィス専用のビルではなく、複合施設となっております。1階には、ミュージックレストランの「アルテリーベ」とイタリア料理の「ランチャンアベニュー」が入っており、2階から5階までには、日本新聞博物館(ニュースパーク)と放送ライブラリーがあります。放送ライブラリーは過去のテレビ放送を無料で視聴できるブースがあるそうで、私はまだ行ったことがないのですが、視聴できる番組数も約3万と多く、お得感が満載のようです。
一方で、オフィスビルではないことからビルの入口が複数あることに加え、エレベーターが東西の端にあるため、11階にある当事務所までなかなか辿り着けないという難点があります。初めて当事務所に来られる際には少し迷うかもしれませんが、そのときは1階のロビーの至るところに警備員の方がいらっしゃるので気兼ねなくお聞き下さい。
ビル周辺に目を向けると、日本大通は歴史的建造物も多く、とても雰囲気が良いため、テレビドラマなど撮影場所として使われることが多く、新事務所に移ってからも何度か撮影のシーンを目撃しました。
当事務所は、このような特徴を持つビルの11階にあります。上階にあるため、窓からの眺めがとてもよく、執務スペースにある海側の窓からは、みなとみらい、赤レンガ倉庫、大桟橋、ベイブリッジなどの横浜の観光の名所を一望することができます。
先日、横浜開港祭が行われましたが、窓から花火がとても良く見えたそうです。後輩のI弁護士が撮影した写真を紹介させて頂きます。

心機一転というわけではありませんが、このような素晴らしいビルで今後も業務に励みたいと思います。
今後ともよろしくお願い致します。

7月 20, 2016

澤田 久代「再婚禁止期間について」

民法733条1項では、女性の再婚は、前の婚姻の解消から6か月間禁止されている。この規定について、昨年12月16日、最高裁判所は、再婚を100日間禁止する部分は憲法に反しないが、これを超えて禁止することは憲法違反であるとの判断を下した。

今後、再婚にあたって、女性は、前の婚姻解消から100日を待てば、再婚できることになる(法務省は、12月16日付けで、全国の市区町村に、同日以降の婚姻届出については100日経過後であれば、受理するようにと通達をだしたようである)。また、この規定が設けられている理由は、生まれてくる子供の父親が、前婚の父とも後婚の父とも推定されることを回避するためであるから、たとえば、女性が不妊手術を受けているなど、父性の推定の重複が生じないような場合には、100日以内であっても再婚することを可能とする法律になるのではないかと、推測される。

離婚事件を扱っていても、双方が離婚したいと言っていても、諸条件がおりあわず1年以上も解決に時間がかかる事件はざらにある。その間に、新しい生活をスタートさせる人もいないわけではない。男女関係、夫婦のあり方についての考え方は、時代とともに、大きく変遷していっているように思う。法律は、時代の流れに沿って変わっていく必要があろう。

また、この判決が出された日、最高裁判所は、選択的夫婦別姓についての判断も行っている。現行の夫婦同姓という規制自体を違憲といえる状態ではないという判断ではあった。が、女性の社会進出などに伴い、時代に即した法制度を立法府が策定する必要にも触れられている。こちらについても、是非、時代に即した法律になるよう、今後、議論の機会が増えればいいと思っている。通称使用を認める企業等が増えてきているとはいっても、通称はあくまでも通称であって、氏名ではない。この不都合さを是非、理解してもらいたいと思う。

2月 10, 2016

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