新型コロナウイルスに関する緊急相談窓口

人事労務の問題じんじろうむのもんだい

※本ページは令和2年5月8日時点の情報に基づいて作成しています。

(1)リモートワーク

リモートワークの導入については、法的な手続が求められているわけではありません。但し、職場環境や労働条件に関する事項ではあるため、リモートワーク導入に際しては、就業規則への規定や、従業員への事前の周知などを行うことが望ましいです。
なお、派遣社員にリモートワークを導入する場合には、その作業をする場所を労働派遣契約に就業場所として追記するなどの対応が必要となります(労働者派遣法第26条第1項第1号)。また、リモートワークではタイムカードのような従来の勤怠管理とは別に、労働時間を客観的に把握する工夫も求められます(労働安全衛生法第66条の8の3)。

(2)時差出勤・時短出勤

始業時刻及び終業時刻は、就業規則に定めることとされています(労働基準法第89条第1号)。ですので、これらの時刻を変動することができる旨が就業規則に規定されている場合には、従業員に周知すれば時差出勤や時短出勤をさせることが可能ですが、規定されていない場合には、従業員との間で個別に合意をすることが必要となります。

(3)出勤命令

例えば、従業員が新型コロナウイルスへの感染リスクを理由に出勤を拒むような場合であっても、使用者が感染リスクを可能な限り排除して従業員が安全に勤務できる環境を提供している限りにおいては、業務命令として出勤を命じることが可能といえます。
但し、安全に勤務できる環境を提供している(安全配慮義務を尽くしている)といえるかどうかは、個別の事案ごとに検討すべきことですので、従業員の意に反して出勤命令を出す前に、一度弁護士にご相談頂くのが望ましいと考えます。

(4)賃金・休業手当・特別休暇

ア:賃金カット
賃金は、「労働の対償」(労働基準法第11条)であることから、労務の提供が無い限り、賃金の支払義務が発生しないのが原則です。但し、使用者側の責めに帰すべき事由によって、従業員に時短勤務などを命じたものの、その従業員自身は通常通りの勤務を希望するような場合には、危険負担の法理に基づいて、本来の勤務時間に対応する賃金を支払う義務が生じることになりますのでご注意ください。
イ:出勤停止措置と賃金支払義務・休業手当支払義務
労働基準法第26条は、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に際して、従業員に対して平均賃金の60%以上を支払うように求めています(休業手当)。この点、従業員が新型コロナウイルスに感染したために休業させる場合についてですが、都道府県知事が就業制限を行っている場合においては、「使用者の責めに帰すべき休業」には該当せず、休業手当を支払う必要がない、とするのが厚生労働省の見解です。
しかし、従業員が新型コロナウイルスに感染した疑いがある(確実ではない)場合の休業については、個別具体的に、その従業員が「職務の継続が可能であるか」という観点から休業手当の支払義務の有無を慎重に検討する必要があると考えられます。
ウ:有給休暇取得とその勧奨
新型コロナウイルス感染症に関する対応として、ガイドラインなどに基づき、臨時休業などをした小学校などに通う子どもや、新型コロナウイルスに感染した子どもなど小学校を休む必要がある子どもの世話を保護者として行うことが必要となった従業員に対して、有給(賃金全額支給)の休暇を取得させた事業主は、助成金の対象となります。ですので、従業員の生活を守るためにも、年休の有無にかかわらず、この助成金を活用して有給の休暇制度を設けることをご検討下さい。
詳しくは、小学校休業等対応助成金をご参照下さい。
エ:雇用調整助成金
事業主の皆様においては、厳しい状況の中にあっても、従業員の雇用維持に努めることが求められております。一定の要件のもと、従業員に支払った休業手当について助成を受けることも可能ですので、雇用調整助成金の活用をご検討下さい。詳しくは、雇用調整助成金をご参照下さい。

(5)安全配慮義務・安全衛生・感染予防

事業主は、従業員に対して安全に勤務できる環境を提供すべき義務(安全配慮義務)を負っています。例えば、従業員の体調の把握やアルコール消毒の推奨、マスク着用の推奨、濃厚接触を避ける措置、従業員に感染者が出た場合における対処方法の確立など、新型コロナウイルスへの感染・拡大リスクを抑えるためにできることはしっかりと履行していくことが求められています。
感染リスクや感染経路、予防方法などの情報は日々更新されていきますので、公的機関が公表する各種情報の把握を行い、これらに基づく措置を適切に行っていくことが必要となります。

(6)感染の疑いのある従業員への対処

新型コロナウイルス感染症が労災保険の支給対象となるかについてですが、厚生労働省は、新型コロナウイルス感染の疑いがある従業員への対処として、その従業員には仕事を休むよう呼びかけています。感染の疑いのある従業員が休むことは、従業員本人のためにもなりますし、感染拡大の防止にもつながる大切な行動です。
そのため、事業主には、従業員が休みやすい環境整備をすることが望まれています。

(7)従業員が感染した場合の対処

新型コロナウイルス感染症が指定感染症に定められたことにより、従業員が新型コロナウイルスに感染していることが確認された場合は、感染症法に基づき、都道府県知事が当該従業員に対して就業制限や入院の勧告等と行うことができることになりました。
事業主としても、くれぐれも新型コロナウイルスに感染した従業員が就業することがないよう努めるほか、感染経路の確認などを速やかに行い、他の従業員への感染拡大を防ぐ措置をとることが求められています。

(8)傷病手当・労災

労災保険法第7条第1項第1号が定める「業務災害」とは、従業員の業務と負傷等の結果との間に当該業務に内在又は随伴する危険が現実化したものといえる相当因果関係が必要とされています。
この点、医療従事者や介護従事者以外については、一般的に業務と新型コロナウイルス感染との間に、このような相当因果関係が認められるケースはあまりないと思われます。ですので、従業員が新型コロナウイルスに感染してしまった場合においても、労災保険の給付を受けられない可能性があります。
なお、業務災害以外の理由により新型コロナウイルスに感染した場合には、他の疾病に罹患している場合と同様に、傷病手当金の支給対象となる、とするのが厚生労働省の見解です。

(9)新型コロナウイルスに関連する解雇・内定取り消し

新型コロナウイルスが原因で経営状態が悪化したことを理由に、従業員を解雇できるかという点ですが、このような事業者側の経営上の理由による整理解雇については、正当事由がないと無効とされてしまいます。整理解雇の正当性については、以下の4つの要件から厳格に判断されることとなっています。

  • ①人員削減の必要性があること
  • ②解雇を回避するための努力が尽くされていること
  • ③解雇される者の選定基準及び選定が合理的であること
  • ④事前に解雇される者へ説明・協議を尽くしていること

なお、内定取り消しの場合においても、同様の要件によって正当性(有効性)が判断されることになります。ですので、整理解雇・内定取り消しを決断する前に、上記要件を満たしているかも含めて、一度弁護士にご相談頂くことをお勧めします。

横浜綜合法律事務所では、弁護士による無料の法律相談を実施しております。お悩みの方はお気軽にご相談下さい。

※本ページは令和2年5月8日時点の情報に基づいて作成しています。

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