横浜綜合法律事務所 コラム

こどもの目

水族館に、子供を連れて行った時のことである。
親としては、せっかくなら、海の生き物たちが泳ぎ回る世界を楽しんでもらおうと思い、ほら見て、と大きな水槽の中を指差す。
ところが、子供は館内でごった返す人間たちの様子を、イワシの群れやエイを見るのと同じように面白がるし、脇の通路にひっそりと佇む募金用のアシカの置物を興味深そうに触って回り、水槽の中の本物のアシカと同じくらいの時間をかけて楽しむ。
目玉と謳われるショーへ向かう途中も、通路の電飾や変わった床材などに目が輝き、一向に目的地まで到達しない。周りの大人たちは当然、電飾や内装は脇役と分かっているので、効率的に、水槽から水槽へと目を移し進んでいく。
もっと楽しいものがあっちにあるよ!と子供を抱きかかえて急ぐ親の気持ちも、とてもよく分かるが、水槽の中の生き物を見て楽しむのが水族館、といったことなど、彼には全く関係ないのだと気づき、同時に、我々大人は対価の有無や提供側の思惑・演出で、楽しむべき対象、情報を得る枠を予め決めてしまっているのだなと、少しはっとさせられた。
彼は、ショーで拍手喝采を浴びるイルカたちにも、通路の電飾にも、同じように興味を向け、何かを発見し、楽しみ、学んでいるのだろう。
一旦、子供のような、フラットな目で。
仕事でも、日常生活でも、忘れずにいたいと思う。

2021年6月25日

自転車損害賠償責任保険

自転車は、道路交通法では、「軽車両」に分類され、自転車に乗る際には、道路交通法の適用を受けることになります。ただ、気軽に利用できるということもあってか、かねてより、必ずしも交通ルールが遵守されていないとの指摘を受けており、また、昨今では、自転車側が加害者になる事故も多くなっていることもあって、自転車に乗る際の交通ルールの順守の必要性が強く指摘されるようになっています。

こうした点を踏まえて、神奈川県では、平成31年4月1日から「神奈川県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が施行されました。

この条例では、自転車の安全で適正な利用の為の責務が定められるとともに、同年10月1日以降は、自転車の利用者に対して、「自転車損害賠償責任保険等」に加入することが義務付けられています。この加入義務は、自分で運転する場合だけでは無く、未成年者に自転車を利用させる場合の保護者や、自転車を従業員に利用させる事業主に対しても課せられています。

この義務に違反した場合の罰則は定められていませんが、自転車事故での高額の賠償を認めた裁判例も出ていますので、被害者保護の観点からも積極的に加入をすべきであろうと思い、御紹介をさせて頂きました。

2021年5月28日

テレワークについて

令和2年4月7日の緊急事態宣言の発出を契機として、多くの事業所でテレワークが実施されるようになりました。テレワークとは、「情報通信技術を利用して行う事業場外勤務」と定義されており、自宅だけでなく、カフェ等の任意の場所で行うものも含みます。テレワークは、政府が、既に2003年7月策定の「eJAPAN戦略II」で、2010年に日本の労働人口の2割をテレワーカーにする目標をかかげており、助成金等の支援制度もありました(新型コロナウイルス感染症対策のための特別な助成制度もできました。)。しかしながら、日本の商慣習、情報セキュリティの問題、労務管理の難しさ等の点でなかなか進みませんでした。今回、半ば必要に駆られてテレワークが実施されるようになったものの、テレワークは通勤時間が大幅に短縮されますから、地方在住であったり、育児・介護等で働く時間が限られていて就業の機会に恵まれなかった優秀な人材を獲得できたり、家族の事情等で離職することを防げるなどメリットがありますので、これをきっかけにより普及していくと思われます。

テレワークを行う上で、注意する必要があるのが労働関連法規との関係です。使用者は、労働契約を締結する際、従業員に対し、就業の場所を明示しなければなりません。就業の場所が事業所のみになっている場合には、事業所に加え「使用者の許可する場所」などの文言を追加する必要があります。また、労働時間の適正な把握も課題です。テレワークは、長時間労働を助長しやすいとも言われていますので、労働安全衛生に配慮する必要がありますし、就業時間外にメールや電話等をするなどして、思わぬ残業代請求を受ける可能性もあります。一方、従業員の方の側でも、事前申告のないまま時間外に労働をしたとしても、労働時間とは認められないこともあります。時間外労働を含めた労働体制について、就業規則等への明記や労使協定を検討することが有用です。

2021年5月14日

コロナ禍でのスタジアム観戦

前回のブリーズで、毎年恒例の全国法曹サッカー大会が、今年は11月に石垣島で行われる予定であるとお伝えしましたが、コロナウイルスの影響で中止となってしまいました。中止は残念ですが、気持ちを切り替え、来年の大会に向けてじっくり身体も心も鍛えていこうと思います。
話はアマチュアサッカーからプロサッカーに変わりますが、コロナウイルスの影響で延期となっていたJリーグが6、7月から再開され、7月中旬からは収容制限5000人としながらも観客の動員が認められるようになりました(9月末からは収容制限が収容人数の50%となっているようです)。
私も、Jリーグ再開後に何度かスタジアムに足を運び、観戦をしているのですが、観戦状況は以前と全く異なっておりました。まず、座席に間隔が設けられており、同行者がいたとしても隣同士で座ることができません。観客は常にマスクを着用しており、声を発しての応援もすることができません。鳴り物も禁止とされ、タオルマフラーを振り回す行為も禁止とされております。
観戦状況を説明すると、やや寂しい感じもしますが、応援による音がないので、選手同士の声がスタジアム中にとても良く響き渡りますし、いつもは聞くことができない試合中の選手の声を直接目の前で聞くことができるのは貴重ですので、むしろ以前の観戦時よりも楽しいと感じています。スタジアムでの観戦は今がお勧めです。

2021年4月30日

日本のハンコ文化

令和2年9月24日、河野行政改革担当相が、行政手続での印鑑廃止を全省庁に要請したとの報道がなされました。諸外国と比較すると、日本は印鑑による押印を重用しており、ハンコ文化と表現されることもあります。近時のコロナ禍を受けてテレワークを導入する企業が増えている中、押印のための出社がテレワークの妨げとなっているとの指摘もあり、政府がハンコ文化の見直しの動きをみせたことは世間の注目を集めています。

日本の法律では、文書の作成にあたって、印鑑による押印が必須とされているわけではありません。しかし、日本では社会人になるタイミングで印鑑を作ることも多く、「自分の印鑑」を大切にする習慣があることを受け、法律の世界では「二段の推定」という考え方があります。文書に押された印影が本人の印鑑によるものである場合、本人が文書に押印したと推定され(一段目の推定)、さらに、その文書は本人の意思で作成されたと推定される(二段目の推定)という考え方です。例えば、Aさんの印鑑で押印された発注書が存在する場合、Aさんが発注書どおりに注文したと推定され、その結果、Aさんには発注書どおりの支払義務があると考えられるわけです。

日本には印鑑を重用する文化があり、自分の印鑑を安易に他人に貸すことはないという経験則があるために、このような考え方が取られるのです。私が過去に扱った案件で、ある会社の印鑑を出入りの業者が無断使用したかどうかが争点となった案件がありました。その会社の印鑑が押された発注書が存在したものの、その会社は「出入りの業者が無断で押印した。」と主張したため、印鑑の保管場所や保管状況、その他の文書で使用されている印鑑と一致しているかどうか等が問題となりました。また、シャチハタ不可という書類もあります。これは、シャチハタは大量生産されており同じ印面のものが存在するため、書類によってはシャチハタを使用できないとされることがあるのです。

現在も印鑑登録制度があるのは日本だけとも言われています。国際的に署名(サイン)が重視されている中、日本も「脱ハンコ」をすることになるのでしょうか。

2021年4月16日

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