横浜綜合法律事務所

夫婦・離婚・男女問題「枕営業は不貞行為にあたるか」

クラブのママやホステスがいわゆる「枕営業」として長期間にわたり顧客と性交渉を繰り返した行為が、当該顧客の妻との関係では、不法行為は成立しないという判決が、東京地方裁判所にて言い渡されました(東京地方裁判所平成26年4月14日判決)。
事案の概要としては、クラブのママである被告が、顧客である原告の夫と、約7年間、月に1、2回、共に昼食を摂った後に、ホテルに行って、午後5時頃別れるということを繰り返し、7年間にわたる継続的な不貞行為があったとして、原告が被告に対し、400万円の慰謝料を請求した事案です。

被告は、原告の夫との不貞行為の存在そのものを争っていましたが、本件判決は、仮に原告の夫と被告との間の不貞行為の存在が認められるとしても、原告の夫と被告の性交渉は典型的な「枕営業」に該当すると認定したうえ、クラブのママが枕営業として顧客と性交渉を反復継続したとしても、売春婦の場合と同様に、顧客の性欲処理に商売として応じたにすぎず、何ら原告と原告の夫との間の婚姻共同生活の平和を害するものではないから、そのことを知った原告が精神的苦痛を受けたとしても、原告に対する関係で不法行為を構成するものではないとして、原告の請求を棄却しました。

これまでの裁判実務では、性交渉が、両名の自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、当該性交渉の時点で夫婦関係が破綻していない限り、不法行為に該当し、慰謝料支払義務があると認められるという取り扱いがなされてきたとみられるため、本件判決が、これまでの実務の取扱いに影響する可能性もあるものと考えられます。
本件判決は、控訴されずに確定してしまい、上級審の判断がなされたわけではありませんが、 特徴的な裁判例であるため、ここでご紹介させていただく次第です。

2015年8月21日

夫婦・離婚・男女問題「DNA鑑定で血縁を否定された法律上の親子関係に関する判例」

平成26年7月17日、DNA鑑定で血縁関係が否定された戸籍上の父と子の法律的父子関係を覆せるか否かについて、最高裁判所が判断した判決が出ました。
このケースは次のようなものです。夫と妻の婚姻中に、妻が別の男性Aと性的関係をもち、子どもが生まれましたが、夫婦の子として戸籍が作成されました。その後、DNA鑑定をした結果、Aが子の生物学的な父親である確率が99.99%であると判明しました。夫婦は既に離婚しており、現在、母子はAともに生活しているという事案で、母が子の法定代理人として、戸籍上の父と子の間の親子関係不存在確認を求め、戸籍上の父はそれを争ったというものです。
民法では、772条で、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定すると定めています(嫡出推定規定)。この規定の例外として、親子関係不存在確認の訴えによって父子関係を否定できるのは、妻が子を懐胎すべき時期に、既に夫婦が事実上の離婚をしていて夫婦の実態が失われ、又は、遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかである場合に限るとされてきています。
本件では、上記例外には該当しないケース(夫婦の実態が失われていなかったため)ではありますが、DNA鑑定によって生物学的な父子関係が否定されている場合に、法律上の父子関係を否定すべきか否かが争われたわけです。
この点、第一審、第二審では、父子関係を否定する判断がなされたのですが、平成26年7月17日の最高裁判例では、上述した嫡出推定規定が及び、父子関係を否定できないとの判断がなされました。ただ、最高裁でも、5人中2人の反対意見があり、まさに判断が分かれたわけです。
現在は、民法が制定された当時では想定できなかった科学の進歩により、生物学的父子関係が明白になりえます。血縁を重視するのか、それだけでいいのか、本ケースのように生物学上の父子が共に暮らしているという場合だけでなく、そうでない場合や、これを認めたとして今後どのようなことが想定されるのか等様々なことを考慮する必要があるとは思いますが、少なくとも、明治時代につくられた規定を再検討する時期にきていることは間違いないと思われます。

2014年7月25日

夫婦・離婚・男女問題「『離婚の慰謝料』についての基礎知識」

離婚する際には、子の親権、養育費、財産分与、慰謝料、及び、年金分割などといった様々な事柄を慎重に検討しなければなりませんし、その検討のためには,離婚についての基本的な知識をしっかりと押さえておく必要があります。
今回のトピックでは、特に「離婚の慰謝料」に焦点を当て、日々の法律相談において特によくある質問をピックアップし、Q&Aという形で、ご説明をさせて頂きます。

Q1 離婚の慰謝料は、どのような場合に請求できるのですか。
A1 離婚の慰謝料の請求も、不法行為に基づく損害賠償請求の一つですので、その請求が認められるためには、不法行為(民法709条)の要件を満たしていることが必要となります。具体的に言いますと、①違法性のある加害行為(浮気や暴力など)の存在,②損害(精神的苦痛等)の存在、③加害行為と損害との因果関係(加害行為によって婚姻関係が破綻したこと等)の存在といった、不法行為の各要件を満たしていることが必要です。
離婚の慰謝料の請求が認められ得る代表的なケースとしては、相手の不貞(浮気)や暴力(DV)ですが、その他にも、悪意の遺棄、性交渉の拒否、浪費などといったケースにおいても、離婚の慰謝料の請求が認められる場合があります。
例えば、性交渉の拒否のケースを挙げると、妻が結婚後一度も夫の性交渉に応じなかったとして夫の妻に対する離婚の慰謝料請求を認めた裁判例などがあります。
また、例えば、浪費等のケースを挙げると、妻が殆ど掃除をせずしかも子どもの習い事に多額のお金を費消していたといったようなケースで、夫の妻に対する離婚の慰謝料請求を認めた裁判例などもあります。
どのようなケースであれば離婚の慰謝料を請求し得るかについては、一概には言えず、ケースバイケースですので、離婚の慰謝料を請求しようかどうかお悩みの方は、一度、弁護士に相談することをお勧め致します。
Q2 浮気(不貞)の場合における離婚の慰謝料について、詳しく教えて下さい。
A2 夫(妻)が浮気(不貞)をした場合、通常、妻(夫)は、夫(妻)に対して、離婚に伴い、離婚の慰謝料を請求することができます。ちなみに、裁判においては、一般的に、浮気の期間が長ければ長いほど、浮気の回数が多ければ多いほど、離婚の慰謝料の額は、高くなる傾向があります。
裁判において、相手の浮気を理由に離婚の慰謝料を請求する場合には、相手の浮気を特定(浮気の開始時期や、浮気の相手、浮気の期間・回数などを特定)することがとても重要となります。
その特定に多く用いられている確実な証拠としては、興信所の調査結果報告書が挙げられますが、興信所に浮気の調査を依頼すると、高額な費用を要することとなるのが一般的かと思いますので、注意が必要です。
浮気の事実やその期間・回数などを直接的に証明し得る証拠を確保できるケースというのは、通常、そう多くはありません。相手が浮気を否定している場合には、様々な間接的な証拠から、相手の浮気を特定して、これを証明していくことが必要となります。
浮気の際に使用したホテルや飲食店等の領収書やクレジット利用明細、浮気相手へのプレゼントの領収書やクレジット利用明細、浮気の際に使用した車のETCの利用明細、さらには、浮気相手とのメール・電話の履歴など、浮気と少しでも関連しそうなものは、とにかく、相手に破棄されないよう、すべて、しっかりと保存しておくことが重要です。
ちなみに、浮気の末、浮気相手との間に子どもができたことが判明したようなケースでは、戸籍謄本が浮気を証明する一つの重要な証拠となり得ます。
相手の浮気を理由に離婚の慰謝料を請求する場合には、通常、さらに、相手の浮気前には夫婦関係が円満だったこと(相手の浮気後に夫婦関係が破綻したこと)を立証していく必要があります。実際、裁判において、「浮気前から夫婦関係は既に破綻していたので離婚の慰謝料の請求は認められない」と相手から反論されるケースが多くあります。この点、相手の浮気前には夫婦関係が円満だったことを立証し得る重要な証拠としては、例えば、夫婦間のメールの履歴や家族写真などといったものが挙げられます。
Q3 離婚の慰謝料の額の相場を教えて下さい。
A3 離婚の慰謝料の額の算出にあたっては、一般的に、有責性、婚姻期間(同居期間・別居期間)、相手の資力(社会的地位)といった要素のほか、婚姻生活の実情、家族関係、子どもの有無・数などといった様々な要素が考慮されます。
それゆえ、離婚の慰謝料の額については、個別具体的な事案ごとに様々なのですが、あくまでも一つの目安として、判決で離婚の慰謝料が認められる場合、200万円前後~300万円前後と認定されることが一般的に多いようです。
ただ、個別具体的な事案によっては、これを大幅に上回る離婚の慰謝料を認定している裁判例がありますし、また、これを下回る離婚の慰謝料を認定している裁判例もあります。

2014年7月15日

夫婦・離婚・男女問題「養育費・婚姻費用の算定方法」

普段、家族や夫婦で生活をしているときは、家族一人一人のために毎月どれくらいの生活費がかかっているかということを意識している方は多くはないでしょう。
しかし、親が離婚をすることとなった場合、子を監護していない親は子を監護している親に対して、子の生活費を「養育費」として支払うことになります。また、離婚に至らなくとも別居することとなった場合、子の生活費と相手方の生活費を「婚姻費用」として支払うことになります。

養育費や婚姻費用の額をいくらとするかについては、当事者が話し合いで決めることができます。家庭裁判所の実務ではおおまかな算定基準が設けられており、この基準をもとに話し合いがなされることが一般的です(算定基準については、取扱い業務「夫婦・離婚・男女問題」内の「養育費」の項をご覧下さい)。

この算定基準では、お互いの年収、子どもの人数や年齢から、おおまかな金額が定められています。そのため、一般の方がご覧になっても、養育費や婚姻費用の額をある程度イメージすることができます。
もっとも、この算定基準は、夫婦が離婚したり別居したりするにあたって、子どもの人数や就学状況、住宅ローンの支払方法等に関して比較的多いと思われるケースを前提に作成されているので、この算定基準をそのまま用いることができないケースも多々あります。

われわれ弁護士が夫婦間の問題についてご相談を受けたり、委任を受けたりすると、「養育費や婚姻費用の額が相当であれば払う/受け取る意思があるものの、相当な額が分からないため、話し合いが成立しない」ということはよく見受けられます。
横浜綜合法律事務所では事務所内で定期的に研究会を開催しており、先日の研究会では、養育費・婚姻費用の算定方法についての研究や議論がなされました。
算定基準をそのまま用いることができるケースかどうか、そのまま用いることができない場合はいくらが相当であるかという点について知りたい方は、横浜綜合法律事務所の弁護士にご相談下さい。

2014年3月7日

夫婦・離婚・男女問題「結婚件数と離婚件数」

皆様は、日本で1年間に何組の人が結婚し、離婚しているかご存知でしょうか。
厚生労働省が行っている人口動態調査の結果をみると、それがわかります。
例えばこの表によると…
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei12/dl/04_h2-1.pdf
平成23年には66万組の人が結婚し、23万組の夫婦が離婚していることがわかります。離婚の件数は、ここ数年は横ばいかやや減少傾向にあるようですが(結婚件数も減っていますね)、それでも23万組というとかなりの数です。非常に大雑把に言えば、3組の内1組が離婚するということになってしまいます。

そして、最高裁判所の資料によると…
http://www.courts.go.jp/vcms_lf/jinso_gaikyou_h23.pdf
平成23年に提起された離婚訴訟は約1万件。つまり、23万組の内の1万組の夫婦は、裁判外の話し合いや調停では解決ができずに、訴訟になってしまったということです。
調停まで含めると潜在的な紛争案件はもっと多いのでしょう。例え離婚することになってしまったとしても、この最後の1万件の中には入らず、できる限り円満な解決を目指したいものです。

2013年12月10日

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