横浜綜合法律事務所

不動産・借地借家「家賃不払いへの対処」

近時、不動産の中でも、大家さんからの家賃不払いに関する相談が増えています。
家賃不払いは債務不履行(契約違反)にあたるので、それを理由に賃貸借契約を解除した上で、賃借人に立退きを求めることができます。
民法では、債務者(賃借人)に債務不履行がある場合、債権者(大家さん)は相当期間を定めて履行を催告し、期間内に履行がないときは契約を解除できる、と定められており、実務では内容証明郵便で上記内容の通知を発送します。
解除されると賃貸借契約は消滅するので、大家さんは賃借人に立退きを求めることができます。この場合、賃借人に非があるので、立退料等を支払う必要ありません。賃借人が任意に立ち退かない場合には、訴訟を提起することになります。さらに、判決が出ても賃借人が立ち退かない場合には、強制執行の手続きをとる必要があります。
なお、立退きに加え、未払い賃料の請求もできますが、資力のある連帯保証人が付いているような場合を除き、現実に回収することは困難です。

2014年12月8日

不動産・借地借家「マンション騒音の問題について」

マンションの騒音問題について相談を受けることがありますが、その法律問題について検討したいと思います。

Q1 私の居住しているマンションはフローリングの床になっていますが、椅子や机を移動したときの音、物を落としたときの音、子どもが飛び跳ねたときの音など階下の居住者に迷惑をかけていないか心配です。もし、仮に、法的に問題になるとしたら、どのようなことが考えられますか。
A1 騒音により被害を受けている者からの、①騒音により生じた損害賠償請求、②騒音を止めることを目的とする差し止め請求が考えられます。
そして、上記請求が認められるためには、受忍限度を超える違法性が騒音を発生させた側にあるのか否かが問題となります。日常生活を送る際、通常発生する音について、不快だからといってすべてが損害賠償請求や差し止め請求の対象となるのでは、社会生活を営むことができなくなりますから、受忍限度という、客観的にみて我慢の限度を超える音であると認められた場合に限って、違法性が認定され、損害賠償請求あるいは差し止め請求が認められることになると思います。差し止め請求が認められるには、損害賠償請求が認められる以上に違法性の程度が高い事情が必要かと思います。
ちなみに、下級審判例ですが、絨毯張りだった床をフローリング床にしたことにより、騒音が4倍になり、早朝深夜にわたる騒音も度々あったという事案について、受忍限度を超えているとして、慰謝料75万円を命じたものがあります(東京地裁八王子支部平成8年7月30日判決)。また、子どもが廊下を走ったり飛んだりする音が受任限度を超えるとして、音のレベルが50dB~65dB程度のものが多く、午後7時以降、時には深夜にも及ぶことがしばしばあったことを認定し、慰謝料30万円等の支払を認めたものがあります(東京地裁平成19年10月3日判決)。
Q2 私の居住しているマンションはフローリング床であり、椅子を少し移動したり、物をたまに落としたりする程度なのですが、階下の居住者から音がうるさいといった苦情があまりにも多くて困っています。私は音を極力出さないようにしており、日常生活を送るうえでやむを得ない程度の音しか出していないと思っています。しかし、ここ1年間、事あるごとに、階下の居住者が、天井を10分~1時間にわたって叩いたり、深夜早朝に数十回抗議電話をしたり、数十回パトカーを呼んだりすることもあり、私の方が精神的に参っています。どうしたらよいでしょうか。
A2 階下の居住者の生活騒音を理由とする抗議行動により、逆に、精神的苦痛を伴う損害を被っているのであれば、その抗議行動が常軌を逸しているものとして、損害賠償請求が認められる可能性があると思います。また、階下の居住者が主張する騒音損害が受忍限度を超えていない騒音であれば、階下の居住者の損害賠償請求があったとしても否定されると思われます。
Q3 私はマンションの管理組合の理事長をしている者ですが、マンション1階にカラオケスタジオがあり、深夜に亘って騒音があるので、何とかしたいのですが、方法はありますか。
A3 騒音の程度がマンション居住者の共同の利益に反する場合は、建物の区分所有等に関する法律57条による差止請求や同法58条に基づく使用禁止請求が可能です。
実際、ご質問のような案件で、区分所有者の共同の利益に反するとして、夜間の一定時間帯のカラオケスタジオとしての使用禁止が認められております(東京地裁平成4年1月30日判決)。

2014年8月27日

不動産・借地借家「土地の境界をめぐるトラブル~筆界特定制度~」

土地の境界をめぐるトラブルは、裁判で解決するしかないと思っていませんか?
法務局が行っている「筆界特定制度」を活用すれば、裁判をしなくても、境界トラブルを早期に解決することができるかもしれません。
土地には二種類の「境界」があるとされています。一つが、土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた「筆界」であり、もう一つが、所有権の範囲を画するものとして用いられる「境界」です。
筆界特定制度とは、土地の所有者として登記されている人などの申請に基づいて、筆界特定登記官が、外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、現地における土地の筆界、すなわち、土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた「筆界」を特定する制度です。
筆界特定制度は、土地の所有権の範囲の特定を目的とするものではありませんが、筆界は土地の所有権の範囲と一致することも多いので、筆界特定制度を活用することによって、裁判をしなくても、土地の境界をめぐるトラブルの解決を図ることができる可能性があります。
土地の境界をめぐるトラブルでお困りの方は、横浜綜合法律事務所の弁護士にご相談下さい。

2014年4月9日

不動産・借地借家「定期建物賃貸借締結の際の注意」

最高裁 平成24年9月13日判決

例えば、地方への3年間の転勤が決まり、家をそのまま無人にしておくのは、物騒だし、もったいないからという理由で、賃貸借期間3年間という賃貸借契約を締結した場合、3年後に転勤から戻ってきても必ず自分の家に住めるとは限りません。
これは個別ページでも述べましたが、賃貸借契約においては、賃借人の地位が保護されており、賃貸人が、更新を拒絶したり、解約を申し入れたりするためには、正当事由というものが必要とされているからです。
上記のように3年間など決まった期間だけ家を貸したいという賃貸人の希望に沿う契約形態として、借地借家法38条(以下「法」といいます)は契約の更新がない定期建物賃貸借という契約を規定しています。
定期建物賃貸借契約を締結すれば、3年間の期間限定の賃貸借契約とすることができますが、賃借人にとっては、期間満了とともに立ち退かなければならないので、借地借家法は、以下のような要件を定めています。

具体的には、定期建物賃貸借契約を締結する場合、公正証書等の書面によること(38条1項)、賃貸人はあらかじめ賃借人に対し、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借契約が終了することについてその旨記載した書面を交付して説明しなければならないこと(同条2項)を規定しています。
このうち、同条2項が定める書面は契約書とは別の書面であることが必要なのか否かという点について判断したのが、上記の最高裁判例になります。
事案の概要は、賃貸人と賃借人との間で、契約の更新がないこと、期間の満了により契約が終了する旨の条項が明記された定期建物賃貸借契約書を取り交わしており、契約締結前にも同契約書の原案を賃貸人から賃借人に送付していたという事案でした。
東京高裁は、賃借人は契約書に本件賃貸借が定期建物賃貸借であり契約の更新がない旨明記されていることを認識していたこと、契約書の原案が送付され検討していたことから、契約書と別個独立の書面を交付する必要性は極めて低く定期借家条項は無効とはならないと判断しました。

これに対し最高裁平成24年9月13日判決は、法38条2項の規定が置かれた趣旨について、「定期建物賃貸借に係る契約の締結に先立って、賃借人になろうとする者に対し、定期建物賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により終了することを理解させ、契約を締結するか否かの意思決定のために十分な情報を提供することのみならず、説明においても更に書面の交付を要求することで契約の更新の有無に関する紛争の発生を未然に防止することにある」とした上で、「紛争の発生を未然に防止しようとする同項の趣旨を考慮すると、上記書面の交付を要するか否かについては、契約の締結に至る経緯、契約の内容についての賃借人の認識の有無及び程度等といった個別具体的事情を考慮することなく、形式的、画一的に取り扱うのが相当である」とし、法38条2項所定の書面は、契約書とは別個独立の書面であることを要すると判断しました。

以上のように、最高裁は、法38条2項の書面は、契約書とは別個独立の書面であることを要すると明確に判断していますので、今後定期賃貸借契約を締結する場合には、この点について十分に注意しなければなりません。

2013年12月10日

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