横浜綜合法律事務所

民法(債権法)改正に伴う会社法・商法の改正

令和2年4月1日から、新しい民法(債権法)が施行されます。この民法改正に伴う、会社法・商法も一部が改正されることになりますので、以下で概要をご案内いたします。

【法定利率の改正】
従前、民法における法定利率は年5%とされており、他方で、商法514条では、商行為によって生じた債務の法定利率を年6%としていました。
今回の民法改正によって、法定利率が年3%(3年ごとに見直し)とされたことに伴い、商法514条の規定は廃止され、商行為によって生じた債務についても、民法と同じ法定利率とされることになりました。

【時効の改正】
民法改正によって、債権の消滅時効が原則5年とされるのに伴い、従前から5年の消滅時効を定めていた商法522条の規定が削除されることになりました。

【詐害的営業譲渡(会社分割)に関する改正】
民法改正によって、従来は「行為の時から20年」とされてきた詐害行為取消権行使の期間制限(除斥期間)が、「行為の時から10年」となりました。
それに伴い、商法18条の2にある詐害的営業譲渡に関する履行請求の期間制限についても、「効力が生じた日から20年」であったものが「10年」となりました。
また、同様に、詐害的会社分割の効力に関する会社法759条6項、761条6項の規定も「効力発生日から10年」に改正されました。

【意思表示(錯誤)に関する改正】
民法の改正によって、錯誤による意思表示の効果が、「無効」ではなく「取り消すことができる」ものとされました。
それに伴い、従前は株式引受けに関して「無効」の主張を制限していた会社法51条2項、102条6項、211条2項も、「取消しをすることができない」と改められました。

【利益相反取引規制の改正】
民法108条1項では、自己契約及び双方代理を禁止しています。
民法の改正によって、自己契約及び双方代理を禁止するとともに、それに違反する行為は無権代理行為であることが明文化されました。
民法108条2項では、利益相反行為を禁止しており、同項は新設された規定です。
民法の改正によって、形式的に自己契約及び双方代理に該当しない行為であっても、代理人と本人の利益が相反する行為については、無権代理行為であることが明文化されました。
 
会社法356条1項2号及び3号は、取締役の利益相反取引を規制しています。2号では直接取引を規制し、3号では間接取引を規制しています。
同条項では、取締役は、会社の承認(株主総会又は取締役会の承認)を受ければ、利益相反取引をすることができると規定されています。
取締役が会社の承認を受けて利益相反取引をした場合、民法108条違反になってしまうことから、その適用を排除するため、会社法356条2項では、会社の承認を受けた利益相反取引については、民法108条は適用しない旨が規定されています。
旧法では、会社法356条2項において直接取引(会社法356条1項2号)のみ民法108条の適用を排除していましたが、民法108条2項の新設により、間接取引(会社法356条1項3号)についても規制が及ぶことになったため、新会社法356条2項において間接取引(会社法356条1項3号)においても民法108条の適用が排除される旨が明文化されました。

2020年3月24日

企業法務「会社法の改正」

改正会社法が本年5月1日から施行されます。
企業統治や親子会社等に関する点が主な改正となります。
たとえば、一定規模以上の会社(たとえば上場企業)においては、事業年度の末日において、社外取締役を置いていない場合に、置くことが相当でない理由を説明しなければならなくなります。社外役員の要件も厳しくなりましたので、これまでの役員が社外役員としての要件を満たすかチェックをする必要もあるでしょう。
また、監査役の監査の範囲を会計監査に限定している場合には、その旨の登記が必要となります。定款に株式譲渡を制限する旨の規定を置いている会社は該当する可能性が高いので、今後監査役の就任(重任も)登記をする際、注意することが必要です。
従来の代表訴訟制度に加えて、100%出資の子会社の役員に対しても、親会社の株主が一定の要件の下で、責任追及をする制度が導入されます。子会社を設けている企業においては、この点のチェックも必要でしょう。
このほか、改正された点は多岐にわたっておりますので、会社法の制度活用については、弁護士等の専門家に確認してみましょう。

2015年4月6日

企業法務「改正景表法の概要について」

先般、ホテルや百貨店、レストラン等において、メニュー表示と異なった食材を使用した料理が提供されていた事案が相次いで発生したことを記憶されている方も多いかと思います。
これをきっかけに講じられた規制強化の1つとして、平成26年6月に、消費者庁より不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」といいます)等の一部を改正する等の法律(以下「改正法」といいます)が公布されましたので、その概要を解説します。

(1)事業者のコンプライアンス体制の確立
まず、事業者のコンプライアンス体制の確立として、事業者は表示等の適正な管理のため必要な体制の整備その他の必要な措置等を講じなければならないこととされ、事業者が講ずべき措置に関して必要な指針を内閣総理大臣が定めることとされました(第7条)。
また、内閣総理大臣は、事業者が講ずべき措置に関して必要である場合には、指導・助言を行い、必要な措置を講じていない事業者に対しては勧告(勧告に従わないときは公表)を行うことができる、とされました(第8条の2)。

(2)情報提供・連携の確保
民間による、問題事案への対処の支援のために、民間団体(消費生活協力団体)等が、適格消費者団体(内閣総理大臣によって認定を受けた団体であり、景表法の違反行為に対する差止請求権が認められている団体)に対して、不当表示等に関する情報を提供できることとされました(第10条)。
また、国、地方公共団体、国民生活センター等が、必要な情報の交換その他相互の密接な連携の確保に努めることとされました(第15条)。

(3)監視指導態勢の強化
迅速かつ的確な法執行の推進を図るために、消費者庁長官の権限の一部(立ち入り検査等の調査権限)を、必要に応じて、事業所管大臣等に委任できることとされました。
加えて、国と地方との密接な連携を確保して、問題事案に的確に対処できるようにするために、消費者庁長官の権限の一部(措置命令権限等)を都道府県知事に付与することができるとされました(第12条)。

(4)課徴金制度の検討等
改正法の施行後一年以内に、課徴金制度の整備について検討を加え、必要な措置を講じることとされました。
消費者庁によれば、この課徴金は、食材の虚偽表示など、商品やサービスが実際より著しく優れていると誤解させたり、「得をする」と思わせたりした表示に関して措置命令を受け、注意を怠ったと認められる事業者に科すことを予定しているようです。
なお、事業者が国民生活センターに寄付をすれば課徴金を免除・減額する仕組みも検討されていたようですが、この仕組みについては平成26年10月3日に消費者庁より撤回されたようです。

この改正法は、公布日(平成26年6月13日)から起算して6か月以内に施行されます。消費者向けに商品やサービスを供給する事業者の方々には重要な改正となりますので、改正法の内容や、今後定められるガイドライン等を理解した上で、準備を進めておく必要があります。

2015年3月19日

企業法務「会社法制の見直しに関する要綱案」

平成24年9月7日に開催された法制審議会第167回会議において、会社法制の見直しに関する要綱案が採択され、直ちに法務大臣に答申されました。この見直しは「企業統治の在り方」と「親子会社に関する規律」に大きく分類されますが、ここでは「親子会社に関する規律」を取り上げます。

「親子会社に関する規律」としては、多重代表訴訟制度、すなわち、親会社の株主がその子会社の取締役等の責任を追及する訴えを提起することを認める制度が注目されます。親会社の取締役と子会社の取締役との人的関係や、持株会社の場合などにはビジネスに関する意思決定が子会社を中心に行われることも多いことなどが創設の理由とされています。しかしながら、親会社の取締役等には子会社を監視する義務があるというべきですから、それを前提に親会社株主は親会社の取締役等の責任を追及する方が自然かつ合理的なような気もします。

いずれにせよ、結局は企業グループ統治に関する問題ですから、本質的には、各企業が、法制の如何にかかわらず、それぞれ自主的に取り組んでいくべき課題であるというべきでしょう。

2013年12月13日

企業法務「内部通報制度」

いわゆるオリンパス事件の東京高裁判決で(東京高裁平成23年8月31日判決)、内部通報をした従業員を配転したことが、内部通報に対する報復であり、人事権の濫用として無効であるとの判断が示され、オリンパス側が同判決に対し上告及び上告受理の申立てを行いましたが、最高裁は、平成24年6月28日、同上告を棄却し、同申立てにつき上告審として受理しない旨決定しました。この事件から、会社における内部通報制度の運用状況及びその問題点を窺い知ることができるように思われます。
消費者庁が平成23年9月7日にとりまとめた「民間事業者における内部通報制度にかかる規程集」(以下「規程集」といいます。)によれば、46.2%の事業者がすでに内部通報制度を導入しています(但し、100人超の事業所では65.2%が導入している一方、100人以下の事業所ではいまだ15.1%にとどまっています)。しかしながら、ほとんど通報がないなど、制度が十分に運用されていないという声も多いようです。制度が十分良く運用されるためには制度に対する信頼を高めていくことが必要でしょう。

オリンパス事件では、内部通報を受けたコンプライアンス室が、内部通報者の承諾なく、関係者に内部通報者が誰であるかを知らせてしまったようです。この担当者個人に問題があったことは否定できないでしょうが、それ以前に内部通報制度を設置した目的が会社及び従業員に十分良く理解されていないのではないかと思われます。
規程集で紹介されている規程においては、その目的として法令違反や不正行為の抑止及び通報者の保護を掲げているものが多いですが、この目的自体に問題はありません。但し、通報により明らかにされた法令違反や不正行為それ自体に対処することで事が足りるのではなく、再発防止措置を講じることの方がより重要です。しかしながら、規程集で紹介されている規程をみても再発防止措置については、「再発防止措置を講じなければならない。」とだけ規定されている例が非常に多く、それは消費者庁が公表している内部規程例でも同じです。不正行為を行った者に対する処分については比較的詳細に規定しているけれども、再発防止措置を講ずべきことについては触れられていない規程すらあります。こうしてみると、通報された法令違反や不正行為への対応にフォーカスするあまり、「誰が」どのような法令違反や不正行為をしたか、それを「誰が」通報したかといったことに必要以上に関心が向けられているような気がします。しかしながら、より重要なことは「誰が」ではなく、どの業務プロセスにおいてどのような法令違反や不正行為が生じたかです。内部通報制度を法令違反や不正行為が起こり得るあるいは相対的に起こりやすい業務プロセスについての情報を収集する制度として位置づけ、得られた情報を内部統制システムの改善に活用していくという意識を十分に浸透させることが必要でしょう。

ところで、規程集において実名通報・匿名通報の取扱いについて規定のある53規程のうち、33規程が実名通報のみ、あるいは原則を実名通報としているようですが、「誰が」が第一義的には重要でないとすれば、あえて実名通報にこだわる必要はないでしょう。匿名通報では、通報内容について十分な調査が行えないことや、虚偽あるいは単なる誹謗中傷の通報が多くなるといった問題があるとの指摘もありますが、この問題は外部窓口の設置によって一定程度解決できると思われます。規程集において通報窓口の設置場所について規定がある75規程のうち、29規程においては外部窓口が設置されており、弁護士が外部窓口となることが多いようです。

2013年12月13日

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