横浜綜合法律事務所

その他「民法改正の概要」

民法は私人間の法律関係を規律する一般法であり、物の売り買い、お金の貸し借り、賃貸借など日常生活を送る上でも、接する機会の多い法律です。

この民法は明治29年に制定され、その後親族法・相続法については全面的な改正がされたものの、上に挙げたような個人間の契約関係を規律する債権法に関しては、担保物権法等の部分的な改正を除き、120年以上もの間抜本的な改正はされてきませんでした。

そこで、民法制定以来の社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かりやすいものとする等の観点から、平成21年以降、民法改正について議論されてきました。
その後、平成27年3月31日、民法改正案が閣議決定されるとともに改正法案が国会に提出され、平成29年4月14日、衆議院にて可決されました。
今後参議院で可決されれば、改正民法が成立することとなり、今後3年以内に改正法が施行される見込みとなっております。

今回の民法改正は改正箇所が多岐に亘っており、実務上も抑えておくべき重要な改正部分が多くあります。
今回はそれら重要な改正部分の概要を、次回以降にその詳細についてご紹介していく予定です。

【1】消滅時効
現行民法では、原則的な時効期間を10年間とし、その他短期消滅時効(例えば、飲食店の飲食料は1年間、売買代金は2年間など)を定めていますが、改正法では、短期消滅時効は廃止され、一律の時効期間(債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年間、権利を行使することができるときから10年間)が規定されることになります。
【2】法定利率
改正法案では、法定利率を現行法の5%から3%に引き下げた上で、変動制とすることとして、商事法定利率(6%)は廃止され、上記変動利率に一本化されることとなりました。
【3】保証
改正法案では、事業のために負担する借入を対象とする個人保証・個人根保証は、保証契約の締結前1か月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を確認しなければ(主たる債務者が法人で、保証人となろうとするものが取締役、議決権過半数保有者である場合や、主たる債務者が個人事業主であり、保証人となろうとするものが共同事業者等である場合には、公正証書は不要です)原則として無効とされます。
【4】約款
現行民法には規定のなかった約款について、定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの)において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体と定義し、定型約款に関する規定を明文化しました。
【5】意思能力
意思能力(自らの行為の意味を理解する能力)のない者がした契約が無効であるというルールは、民法の条文には明記されていないものの、判例上認められていました。
このルールについて改正法では明文化されることになりました。
【6】敷金
現行法には規定のなかった敷金について明文化するとともに、返還時期についても賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときとされこれまでの判例法理が明文化されることになりました。

2017年10月4日

その他「裁判における電話会議」

電話会議は、ビジネスの世界ではよく用いられているようですが、裁判でも利用されていることはご存じでしょうか。
特に、民事裁判では、書面のやりとりが主で、証人尋問期日でなければ、法廷では予め送付してある書面のやりとりの確認をして、争点を整理し、次回期日の指定をして終了する・・ということが多く、わずか数分で終了することもあります。そのため、それだけのために遠隔地にある裁判所に出向くのは不合理だということで、電話会議システムが利用されることがあるのです。電話会議では、裁判所に、裁判官と当事者の一方の代理人弁護士がいて、もう一方の当事者の代理人弁護士に電話をかけ、三者間で話しができるようになっています。もちろん、和解を進める場合など顔を見て話しをした方がいい場面もありますが、争点の整理をするだけのときなどには、電話会議でも十分です。たった10分程度のために遠隔地の裁判所に行かなくてはいけないことを考えると、電話会議は、経済的にも時間的にも実に画期的な制度です。
そして、平成25年1月からは、家事審判・家事調停の手続きにおいても、電話会議システムの利用が可能となりました。調停は、原則として相手方居住地の裁判所に申し立てる必要がありますし、調停では代理人弁護士だけでなく本人も出席した方が望ましい場合が多いことなどから、遠隔地の場合、裁判所への出廷自体が大きな負担となっていましたが、電話会議システムの利用によりその負担はかなり軽減されました。遺産分割や婚姻費用分担の調停などでは、全て電話会議で行い、一度も裁判所に出廷せずに調停が成立することもあります。但し、離婚や離縁の調停では、電話会議によって調停を成立させることはできないと規定されています。これらは、法的な身分関係が変更する場面なので、当事者の意思を慎重に確認する必要があるためです。従って、これらの調停が成立する期日だけは出廷する必要があるわけです。

2015年12月7日

その他「民法の大改正」

平成27年3月31日、民法(債権分野)の改正法案が内閣で閣議決定されました。
明治29年の民法制定以来約120年ぶりの大改正で、今国会で成立する可能性があるとのことです。
主な改正内容について紹介します。
マンション等の賃貸借における敷金について、家賃等の担保と定義し、契約終了後の部屋を明け渡した際に貸主に返還義務が発生することや、借主の原状回復義務について、通常の使用による損耗や経年劣化の修繕をする必要がないことが明文化されます。
約款に関する規定が新設され、約款に基づく契約と示していれば消費者が内容を理解していなくても有効とみなされ、一方で、約款の内容が相手方の利益を一方的に害するものの場合には無効とされます。
飲食店の料金は1年、医師の診察料は3年などの職業別の短期消滅時効が廃止され、消滅時効期間は、権利行使できると知ったときから5年に統一されます。
法定利率が現行の年5%から年3%に引き下げられ、その後3年ごとに市場金利を反映して見直す変動制が導入されます。
中小企業が融資を受ける際に求められる個人保証について、経営者本人などを除いて第三者が保証人になる場合は、公証人による意思確認が必要とされます。
そのほか、約200項目が見直されるとのことであり、今回の大改正は日常生活に様々な影響を与えるものですから、法案の成否に着目し、今のうちから内容を確認しておくことがよいでしょう。

2015年5月14日

その他「日本版クラスアクション法」

平成25年12月4日に「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」いわゆる「日本版クラスアクション法」と呼ばれる法律が成立しました。クラスアクションとは、例えば、ある欠陥商品によって被害を受けた集団がいるような場合に、その被害者の一部が、集団全体のために訴訟を起こすことができるという制度のことで、アメリカなどで立法例があります。消費者問題の救済などに役立つとされています。
これと似た制度が、日本でも作られることになりました。ここでは非常に大雑把な説明となりますが、日本の制度は2段階に分かれており、まず第1段階として、消費者団体が原告となって提起される共通義務確認訴訟によって、事業者の消費者に対する共通義務(被害を受けた消費者に共通する金銭支払い義務)の有無が審理されます。これが認められると、第2段階として、個別の消費者の債権確定手続があり、被害を受けた消費者は消費者団体に債権届出の授権をすることで、共通義務についての支払いを受けることが可能となります。簡単に言えば、消費者団体が起こした1段階目の裁判の結果に後から乗っかることで、消費者が個別に訴訟を提起することなく損害賠償を受けることが可能となります。

なお、本制度によって請求できるのは、契約上の債務の履行や、瑕疵担保・債務不履行・不法行為による損害賠償等とされていますが、逸失利益・人身損害・慰謝料・拡大損害は本制度による請求の対象外となっています。その結果、本制度の対象となる損害はおおむね事業者が消費者から支払を受けた商品・役務の対価相当額に留まることが想定されています。
詳しくは、消費者庁のページをご覧ください。

2014年6月25日

その他「原発事故による損害賠償請求権の消滅時効特例法の成立」

未曽有の損害をもたらした東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「本件原発事故」)を伴った東日本大震災から、この3月で3年が経過しました。
本件原発事故により生じた損害の賠償については、東京電力に対して損害賠償の請求をすることができますが、不法行為に基づく損害賠償請求の時効については、一般法である民法第724条によると、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間」とされています。そのため、本件原発事故から3年が経過すると、損害賠償請求権が時効により消滅してしまう可能性がありました。

そこで、東京電力が民法上の時効を理由に本件原発事故の損害賠償に応じないことを防ぐため、第185回国会において、「東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律」が可決、成立しました。本件原発事故の被害に限り時効が3年から10年に延ばされることになり、少なくとも2021年3月11日までは、時効により東京電力から賠償を受けられなくなる可能性がなくなりました。

未だ多数の被災者が営業損害や自主的避難費用の損害を請求できていないようです。当事務所としても、全ての被災者が適切な賠償を受けられるよう支援していきたいと考えております。お悩みの方は、横浜綜合法律事務所の弁護士にご相談下さい。

2014年5月1日

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