横浜綜合法律事務所 コラム

あるニュースで思い出したこと

先日、生後2か月だった孫の女児を揺さぶって暴行し死亡させたとして、傷害致死罪に問われた祖母の控訴審判決があり、大阪高裁が逆転無罪を言い渡した、というニュースを目にした。一審判決では、祖母である被告人による虐待だと判断され、懲役5年6月が言い渡されていたとのことである。虐待だと判断したのは、被害者である女児に急性硬膜下血腫など「乳幼児ゆさぶられ症候群(シェイキングベイビーシンドローム、SBS)」の兆候がみられたためだということのようだ。そして、今回の控訴審では、一審の判断を「SBSの理論を単純に適用すると極めて機械的で画一的な事実認定を招く」と判示したとのことである。

このニュースを見て、15年以上前に担当した事件を思い出した。生後3か月の男児に急性硬膜下血腫が見つかった。幸いなことに命に別状はなかったが、親子がある日突然隔絶され、SBSによる虐待だと決めつけられた親はなすすべがなかった。一旦虐待だと決めつけられると、それと異なる説明をすれば嘘をつくような親には子どもは返せないと言われ、親は虐待をしたと言うしかないのではないかと悩んでいた。そこから親の代理人として奔走したのである(なお、このケースは、上記のような刑事事件ではなく、親子分離の是非についての争いであった)。最終的には親の元に男児は返されたが、そこに至るまでには長い時間がかかったし、様々な大変なことがあった。男児がいた乳児院にも何度足を運んだか分からない。裁判所には、SBSによる虐待だと決めつけることの問題性を指摘し、SBSによる急性硬膜下血腫が当時どの程度医学的客観的に証明されているかということについて主張した。当時、まさに今回の控訴審判決で指摘された「SBSの理論を単純に適用すると極めて機械的で画一的な事実認定を招く」ことを危惧した。

このような問題は本当に難しい。子どもが守られるべきであることは当然であるが、だからといってとにかく親子分離をすればいいというものではない。権力を有する者こそが決めつけることの横暴さを自覚し、個々の問題に謙虚にあたらなければならないと、当時強く思ったことを思い出した。

あのときの本当にかわいかった男児は元気に成長し高校生になっている。

6月 11, 2021

自転車損害賠償責任保険

自転車は、道路交通法では、「軽車両」に分類され、自転車に乗る際には、道路交通法の適用を受けることになります。ただ、気軽に利用できるということもあってか、かねてより、必ずしも交通ルールが遵守されていないとの指摘を受けており、また、昨今では、自転車側が加害者になる事故も多くなっていることもあって、自転車に乗る際の交通ルールの順守の必要性が強く指摘されるようになっています。

こうした点を踏まえて、神奈川県では、平成31年4月1日から「神奈川県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が施行されました。

この条例では、自転車の安全で適正な利用の為の責務が定められるとともに、同年10月1日以降は、自転車の利用者に対して、「自転車損害賠償責任保険等」に加入することが義務付けられています。この加入義務は、自分で運転する場合だけでは無く、未成年者に自転車を利用させる場合の保護者や、自転車を従業員に利用させる事業主に対しても課せられています。

この義務に違反した場合の罰則は定められていませんが、自転車事故での高額の賠償を認めた裁判例も出ていますので、被害者保護の観点からも積極的に加入をすべきであろうと思い、御紹介をさせて頂きました。

5月 28, 2021

テレワークについて

令和2年4月7日の緊急事態宣言の発出を契機として、多くの事業所でテレワークが実施されるようになりました。テレワークとは、「情報通信技術を利用して行う事業場外勤務」と定義されており、自宅だけでなく、カフェ等の任意の場所で行うものも含みます。テレワークは、政府が、既に2003年7月策定の「eJAPAN戦略II」で、2010年に日本の労働人口の2割をテレワーカーにする目標をかかげており、助成金等の支援制度もありました(新型コロナウイルス感染症対策のための特別な助成制度もできました。)。しかしながら、日本の商慣習、情報セキュリティの問題、労務管理の難しさ等の点でなかなか進みませんでした。今回、半ば必要に駆られてテレワークが実施されるようになったものの、テレワークは通勤時間が大幅に短縮されますから、地方在住であったり、育児・介護等で働く時間が限られていて就業の機会に恵まれなかった優秀な人材を獲得できたり、家族の事情等で離職することを防げるなどメリットがありますので、これをきっかけにより普及していくと思われます。

テレワークを行う上で、注意する必要があるのが労働関連法規との関係です。使用者は、労働契約を締結する際、従業員に対し、就業の場所を明示しなければなりません。就業の場所が事業所のみになっている場合には、事業所に加え「使用者の許可する場所」などの文言を追加する必要があります。また、労働時間の適正な把握も課題です。テレワークは、長時間労働を助長しやすいとも言われていますので、労働安全衛生に配慮する必要がありますし、就業時間外にメールや電話等をするなどして、思わぬ残業代請求を受ける可能性もあります。一方、従業員の方の側でも、事前申告のないまま時間外に労働をしたとしても、労働時間とは認められないこともあります。時間外労働を含めた労働体制について、就業規則等への明記や労使協定を検討することが有用です。

5月 14, 2021

コロナ禍でのスタジアム観戦

前回のブリーズで、毎年恒例の全国法曹サッカー大会が、今年は11月に石垣島で行われる予定であるとお伝えしましたが、コロナウイルスの影響で中止となってしまいました。中止は残念ですが、気持ちを切り替え、来年の大会に向けてじっくり身体も心も鍛えていこうと思います。
話はアマチュアサッカーからプロサッカーに変わりますが、コロナウイルスの影響で延期となっていたJリーグが6、7月から再開され、7月中旬からは収容制限5000人としながらも観客の動員が認められるようになりました(9月末からは収容制限が収容人数の50%となっているようです)。
私も、Jリーグ再開後に何度かスタジアムに足を運び、観戦をしているのですが、観戦状況は以前と全く異なっておりました。まず、座席に間隔が設けられており、同行者がいたとしても隣同士で座ることができません。観客は常にマスクを着用しており、声を発しての応援もすることができません。鳴り物も禁止とされ、タオルマフラーを振り回す行為も禁止とされております。
観戦状況を説明すると、やや寂しい感じもしますが、応援による音がないので、選手同士の声がスタジアム中にとても良く響き渡りますし、いつもは聞くことができない試合中の選手の声を直接目の前で聞くことができるのは貴重ですので、むしろ以前の観戦時よりも楽しいと感じています。スタジアムでの観戦は今がお勧めです。

4月 30, 2021

日本のハンコ文化

令和2年9月24日、河野行政改革担当相が、行政手続での印鑑廃止を全省庁に要請したとの報道がなされました。諸外国と比較すると、日本は印鑑による押印を重用しており、ハンコ文化と表現されることもあります。近時のコロナ禍を受けてテレワークを導入する企業が増えている中、押印のための出社がテレワークの妨げとなっているとの指摘もあり、政府がハンコ文化の見直しの動きをみせたことは世間の注目を集めています。

日本の法律では、文書の作成にあたって、印鑑による押印が必須とされているわけではありません。しかし、日本では社会人になるタイミングで印鑑を作ることも多く、「自分の印鑑」を大切にする習慣があることを受け、法律の世界では「二段の推定」という考え方があります。文書に押された印影が本人の印鑑によるものである場合、本人が文書に押印したと推定され(一段目の推定)、さらに、その文書は本人の意思で作成されたと推定される(二段目の推定)という考え方です。例えば、Aさんの印鑑で押印された発注書が存在する場合、Aさんが発注書どおりに注文したと推定され、その結果、Aさんには発注書どおりの支払義務があると考えられるわけです。

日本には印鑑を重用する文化があり、自分の印鑑を安易に他人に貸すことはないという経験則があるために、このような考え方が取られるのです。私が過去に扱った案件で、ある会社の印鑑を出入りの業者が無断使用したかどうかが争点となった案件がありました。その会社の印鑑が押された発注書が存在したものの、その会社は「出入りの業者が無断で押印した。」と主張したため、印鑑の保管場所や保管状況、その他の文書で使用されている印鑑と一致しているかどうか等が問題となりました。また、シャチハタ不可という書類もあります。これは、シャチハタは大量生産されており同じ印面のものが存在するため、書類によってはシャチハタを使用できないとされることがあるのです。

現在も印鑑登録制度があるのは日本だけとも言われています。国際的に署名(サイン)が重視されている中、日本も「脱ハンコ」をすることになるのでしょうか。

4月 16, 2021

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