横浜綜合法律事務所

労働問題「労働契約法の改正について」

1 はじめに
昨今、アベノミクスによる各種経済政策の影響からか、日経平均株価が2万円に届こうかとするなど景気回復が声高に叫ばれておりますが、その恩恵を受けるのは専ら大企業であり、中小企業や労働者にとってはまだまだ景気の回復を実感するまでは時間がかかりそうです
労働者に占める非正規労働者(契約社員、派遣社員、パート)の割合は30~40パーセントにも及んでおり、2013年には非正規労働者の人数が2000万人を超えたことがニュースになりました。それに伴い、非正規労働者の雇用に関する法律問題も増えてきており、最近、企業の経営者より非正規労働者の雇用に関する相談を受ける機会が多くなってきた感があります。
少し古くはなりましたが、平成24年に非正規労働者の雇用に関する労働関係法(労働契約法、労働者派遣法など)が改正されておりますので、ここでは改正された労働契約法の概要を説明させて頂きます。

2 労働契約法の改正のポイント
有期労働契約は企業内において、パート、アルバイト、契約社員、嘱託社員、派遣社員など様々な呼称が用いられておりますが、これまで、契約を締結する場合の1回の契約期限の上限(労働基準法14条)や、契約途中の解雇に関する規定(労働契約法17条)はあるものの、契約の更新回数の上限や、利用可能期間の上限についての制限は存在しておりませんでしたし、契約の終了に関しても、雇止めに関する規定がありませんでした。
そこで、平成24年に改正された労働契約法では、主に以下の3点について改正がされております。

① 有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換 18条
② 有期労働契約の更新等 19条
③ 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止 20条

3 ①有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換(18条)について
有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合には、労働者の申し込みにより、無期労働契約に転換させる仕組みが導入されました。
ただし、原則として、6か月間以上の空白期間があるときは、前の契約期間は通算しません。
有期労働契約が無期労働契約に転換した後は、別段の定めがない限り、契約期間を除き、従前と同一の労働条件となります。

4 ②有期労働契約の更新等(「雇止め法理」、19条)について
有期労働契約のずさんな反復更新により、当該労働者が無期労働契約と実質的に異ならない状態で存在している場合、または有期労働契約の期間満了後の雇用継続につき合理的期待が認められる場合、雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、有期労働契約が更新されたものとみなすという「雇止め法理」が定められました。
この雇止め法理は、従前、裁判実務で形成されてきたものですが、個々の事情に応じて判断されるものであり、一律の基準はありませんでした。そこで、今回の改正に伴い明文化されたものです。
経営者側としては、少なくとも採用時に契約更新の回数や期間の上限を明示しておくことや契約更新への合理的期待が生じないように雇用管理を行う必要があります。

5 ③期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止(20条)について
有期契約労働者の労働条件が、期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合、その相違は、職務の内容や配置の変更の範囲等を考慮して、不合理と認められるものであってはならないと定められました。
この労働条件には、賃金や労働時間等の狭い意味での労働条件だけではなく、災害補償、服務規律、福利厚生等の一切の待遇を包含するとされております。

2015年4月16日

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